東京地方裁判所 平成10年(ワ)17311号 判決 2000年5月30日
原告
ミック電子工業株式会社
右代表者代表取締役
【A】
右訴訟代理人弁護士
及川昭二
被告
アルプス電気株式会社
右代表者代表取締役
【B】
右訴訟代理人弁護士
飯田秀郷
同
栗宇一樹
同
和田聖仁
同
早稲本和徳
同
久保田伸
同
秋野卓生
右訴訟復代理人弁護士
七宇賢彦
右補佐人弁理士
【C】
同
【D】
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告は、別紙物件目録(一)ないし(三)記載の各物件を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。
二 被告は、原告に対し、金五〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年八月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告は、別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を、同目録記載の新聞に同目録記載の方法で掲載せよ。
第二事案の概要
一 争いのない事実
1 原告は、電気製品の部品及び通信機部品の製造販売業務を主たる目的とする株式会社であり、被告は、電子及び電気機械器具・同部品並びに同材料・情報通信機器・事務機器・精密機器・光学機器等の製造販売業務を主たる目的とする株式会社である。
2 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、特許請求の範囲第1項記載の発明を「本件発明」という。また、本件特許権に係る明細書(甲二)を、「本件明細書」という。)を有している。
登録番号 第一七三〇〇九〇号
発明の名称 センサースイッチ出願日
昭和五七年五月二二日
出願公告日 平成二年六月八日
登録日 平成五年一月二九日
特許請求の範囲
第1項
「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて、検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し、該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、上の接点ばね片の一部に検出突部を設けて、該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け、上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有、無により、検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して、該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ、或は、検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ、即ち、接点も離間(開)位置を保つようにして、対象体の変形部の有、無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする、センサースイッチ。」
第2項
「特許請求の範囲第1項記載のセンサースイッチにおいて、ガイド兼カバー若しくはガイド片のガイド部材と接点ばね片が関連作動するための連係手段は、
(イ) 一方の接点ばね片に連結子を設け、該連結子をガイド部材に連結する
(ロ) ガイド部材の後端部を絶縁基台に回動自在に枢着すると共に、一方の接点ばね片とガイド部材とを、連結子をもって連係せしめる
(ハ) ガイド部材を、一方の接点ばね片に直接一体的に固設する何れかの手段に依るものである、センサースイッチ。」
3 本件発明の構成要件は、次のとおり分説される(弁論の全趣旨)。
(一) 絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて、
(二) 検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し、該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、
(三) 上の接点ばね片の一部に検出突部を設けて、該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け、
(四) 上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有、無により、検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して、該反曲動作によって、接点相互を接触(閉)せしめ、或は、検出突部が案内面から突出したままの原位置を保つ、即ち、接点も離隔(開)位置を保つようにして、対象体の変形部の有、無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする、センサースイッチ。
4 被告は、別紙物件目録(一)ないし(三)記載の物件(以下「被告物件」という。)を製造販売している。
二 本件は、本件特許権を有している原告が、被告に対し、被告物件は本件発明の技術的範囲に属するから、被告による被告物件の製造及び販売は右特許権の侵害であると主張して、右製造販売の差止め、右侵害による損害の賠償及び謝罪広告の掲載を求める事案である。
第三争点及びこれに関する当事者の主張
一 争点
1 被告物件が構成要件(一)、構成要件(二)の「下の接点ばね片」及び構成要件(三)の「上の接点ばね片」を充足するか
2 被告物件が構成要件(二)の「連結手段」を充足するか
3 損害の発生及び額
4 謝罪広告の掲載
二 争点に関する当事者の主張
1 争点1について
(原告の主張)
構成要件(一)は、本件発明の前提周知技術として、接点を備えた二本の接点ばね片を略平行して絶縁基台に埋設し、両接点ばね片の接点を相対して備えたという、リーフスイッチの最も基本的な構成を示したものである。
本件明細書中の「発明の詳細な説明」に、「通常行われているようなスイッチ構成に本発明要旨構成を実施したものは、当然に本発明の技術的範囲に属するものである。」と記載されているとおり、リーフスイッチの基本的構成は、本件発明の実施例図面に示された構成のものに限定されるものではない。
被告物件は、接点ばね片を埋設する方向が構成要件(一)の「上下」ではなく、左右であるが、右のようなリーフスイッチの基本的構成を備えているノーマルオープン型のリーフスイッチであるから、構成要件(一)を充足し、構成要件(二)の「下の接点ばね片」及び構成要件(三)の「上の接点ばね片」も充足する。
本件特許に対する特許異議申立て事件において、接点ばね片の埋設方向が左右である先願考案と、本件発明との同一性について、原告は、本件の被告の主張同様に、接点ばね片を埋設している方向が違うとの主張をしたが、特許庁は、右主張を全く認めず、本件発明の構成要件(二)以下の要件及びそれによる作用、効果の相違を理由として異議申立てを認めない決定をした。このことは、特許庁が、両者のリーフスイッチの基本的構成が同一であることを認めたものである。
また、被告は、被告物件について、特許の出願をしたが、右出願において、被告物件が本件発明とリーフスイッチの基本的構成において全く同一であることを自ら認めたのみならず、右特許出願に対する特許庁からの拒絶理由通知書において、その同一性を指摘されたにもかかわらず、被告物件と本件発明が、接点ばね片の方向、位置関係等が相違することによって、構成要件が相違するとの主張を一切行っていない。
このように、接点ばね片の埋設方向の変更程度のことがリーフスイッチの基本的構成を変更するものでないことは、当業者においては技術的常識である。
(被告の主張)
構成要件(一)の「上下」方向は、接点ばね片の反曲動作の方向であるところ、被告物件は、接点ばね片一〇〇A、一〇〇Bが、絶縁基台一〇一に、「上下」方向とは九〇度ずれた左右方向に略平行して埋設されているから、構成要件(一)の「上下に」を充足しない。また、同様の理由によって、構成要件(二)の「下の接点ばね片」及び構成要件(三)の「上の接点ばね片」を充足しない。
なお、仮に、被告物件の接点ばね片が埋設されている方向を「上下」とすると、被告物件の案内面の形成方向が構成要件(二)と異なることになるから、被告物件は、右の理由によって構成要件(二)を充足しないことになり、さらに、構成要件(三)及び(四)のいずれも充足しないことになる。
2 争点2について
(原告の主張)
(一) 本件特許請求の範囲第2項は、同第1項を引用しているから、第1項の「連結手段」は、第2項の「連係手段」と同一の意義でなければならない。
本件明細書の「発明の詳細な説明」においては、本件発明の技術思想を説明する場合に、「連係」という語句が用いられており、この記載によって「連係手段」「連係設置」「連係」等の語句の意義は明確に把握できる一方、「連結手段」という語句は、右記載中に全く見あたらず、この語句は、本件特許請求の範囲第1項の一か所だけに記載されたものにすぎない。
したがって、構成要件(二)の「連結手段」は、連係手段と読み替えて解釈するのが妥当である。
そして、連係手段の定義は、本件明細書の「発明の詳細な説明」の「ガイド部材Dの接点ばね片に対する連係手段は、直接、間接何れでも任意であり、上記のように案内面2で対象体Cを接触案内するときに、それと連動し首振り運動して接点ばね片が反曲するように連係されていれば可であり」という記載のとおりであり、要するに、ガイド部材と一方の接点ばね片が関連作動できるように連係されているということである。
被告物件の「圧接凸部一〇六」「肉厚側板面106’」及び「当接」は、右の連係手段に該当するので、被告物件は、構成要件(二)の「連結手段」を充足する。
(二) 構成要件(二)の「連結手段」を、「連係手段」と読み替えないとしても、被告物件は、以下のとおり、「連結手段」を充足する。
(1) 本件特許の「発明の詳細な説明」に、「連結手段」の定義がないことからすると、「連結手段」とは、特許請求の範囲の文言に従い、「該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、」を充足するような、技術的な「連結」の「手段」であると解さざるを得ないが、このように解した場合、被告物件の「当接」が、右のような「連結」の「手段」の技術的意義に含まれることは、明白である。
(2) 被告物件の左の接点ばね片一〇〇Aとガイド部材(ガイド兼カバー)一〇〇Dは、常時接触(圧着)し、一瞬たりとも離隔することはなく、また、隔離しては作用できないから、右圧着状態で両者を固着したとしても、構成及び作用効果において全く変わることがない。
したがって、被告物件は、接点ばね片とガイド部材(ガイド兼カバー)が固着されている場合と、構成、作用効果が全く同じであるから、「連結手段」を有する。
(3) 本件特許請求の範囲第2項の(イ)、(ロ)の実施例は、ガイド部材の左右側板内面に空けた「孔」に連結子の突起が当接(圧着)した状態のものであるが、技術的には、連結子の突起を連結する部分が「孔」である必要はなく、連結子を接点ばね片の先端部に設けてもよい。
そうすると、被告物件の接点ばね片一〇〇Aの直角に曲げた先端部分は、連結子の一種であるということができるから、被告物件は「連結手段」を有する。
(4) 本件明細書には、上の接点ばね片の検出突部の基部をガイド部材の上板内面に常時圧着している状態が示されているが、それを下の接点ばね片に用いることは何の困難もないから、そのようなものも「連結手段」ということができる。
被告物件においては、左の接点ばね片一〇〇Aとガイド部材(ガイド兼カバー)一〇〇Dが常時圧着しているから、被告物件は「連結手段」を有する。
(被告の主張)
(一) 本件特許請求の範囲第1項には、「連結手段」と明確に記載されているうえ、本件発明の実施態様項である同第2項(イ)ないし(ハ)が、いずれも連結手段を用いたものであること、本件明細書及び図面に記載があるガイド部材と一方の接点ばね片は、いずれも連結されていることからすると、これを「連係手段」と読み替える必要性や合理性は見いだせない。
(二) 被告物件の圧接突部一〇六、肉厚側板面106’は、ガイド部材(ガイド兼カバー)一〇〇Dと連結していないから、これらが、「連結手段」に当たらないことは明らかである。
したがって、被告物件は、構成要件(二)の「連結手段」を充足しない。
3 争点4について
(原告の主張)
被告は、平成六年三月ころから、平成一〇年六月ころまで、被告物件を五〇〇〇万台製造販売したところ、その販売(工場卸)による利益は被告物件一個につき約三円であるから、被告が右製造販売により得た利益は一億五〇〇〇万円を下らない。
右利益は、原告の損害と推定されるところ、原告は、右損害の内金五〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年八月八日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を請求するものである。
(被告の認否)
損害の発生及び額については争う。
4 争点5について
(原告の主張)
被告は、被告物件が本件特許を侵害することを知りながら、また、原告からの書面による差止めの請求も無視して、大々的に被告物件の製造販売を継続し、原告の業界における名誉を毀損し、業務上の信用を低下させた。
したがって、原告は、これらの名誉、信用を回復するための適当な措置として、謝罪広告の掲載を求める。
(被告の認否)
原告の右主張は争う。
第四当裁判所の判断
一 争点1について
1 本件発明の特許請求の範囲の記載からすると、構成要件(一)の「上下」が、対象体の接触により接点ばね片が反曲動作する方向であることは明らかであるところ、被告物件の接点ばね片一〇〇A及び一〇〇Bが絶縁基台一〇一に埋設されている方向が、別紙物件目録各記載のとおり、対象体の接触により接点ばね片が反曲動作する方向と垂直をなす左右の方向であることは、当事者間に争いがない。
したがって、被告物件は、構成要件(一)の「絶縁基台に接点ばね片を上下に・・・埋設し」を充足しないし、また、構成要件(二)の「下の接点ばね片」、構成要件(三)の「上の接点ばね片」のいずれも充足しない。
2 原告は、構成要件(一)は、絶縁基台に接点ばね片を埋設する方向を限定したものではないと主張する。
しかしながら、右主張は、本件発明の特許請求の範囲の文言に明らかに反するから、採用することができない。
また、証拠(甲二、一六、一七、甲二〇の一ないし七)によると、本件特許の出願時の明細書には、本件発明について、構成要件(一)の「上下に」との記載がなく、また、構成要件(二)の「下の接点ばね片」、構成要件(三)の「上の接点ばね片」のいずれの記載もなかったこと、本件特許の出願に先立って、原告以外の者が、接点ばね片が絶縁基台に左右方向に埋設されているカセットセンサ孔検出装置に係る実用新案の出願をしていたこと、本件特許の異議申立て事件において、申立人が、本件発明と右考案との同一性を主張したこと、原告は、右異議申立て後、構成要件(一)の「上下に」、構成要件(二)の「下の接点ばね片」、構成要件(三)の「上の接点ばね片」をそれぞれ追加する補正を行い、特許異議答弁書において、本件発明は、接点ばね片が上下方向に位置しているから、右の先願の考案とは異なるとの主張をしたこと、以上の事実が認められる。以上の事実によると、原告は、本件発明を、絶縁基台に接点ばね片を埋設する方向が上下のものに意識的に限定したと認めることができるから、原告の右主張は、このような本件特許の出願経過に照らしても、到底採用することができない。
3 なお、証拠(甲二、一七)によると、本件明細書の「発明の詳細な説明」に、「通常行われるようなスイッチ構成に本発明要旨構成を実施したものは、当然に本発明の技術的範囲に属するものである。」(9段三九行ないし四一行)と記載されていることが認められるが、絶縁基台に接点ばね片を埋設する方向が「上下」でないものは、右にいう「本発明要旨構成を実施したもの」ではないから、右記載によっても、接点ばね片の埋設方向が「上下」でないものが、本件発明に含まれるとはいうことはできない。
また、証拠(甲二〇の六)によると、前記特許異議申立て事件において、特許庁審査官は、接点ばね片の埋設方向の相違を理由とせず、別個の理由で、本件発明と前記先願の考案が同一でないとして、右異議申立てを認めない決定をしたことが認められるが、右事実から直ちに、審査官が、絶縁基台に接点ばね片を埋設する方向が「上下」でないものも本件発明に含まれると判断したということができないばかりか、審査官の判断がどのようなものであっても、右1の認定が左右されることはない。
さらに、証拠(甲二一及び二二(いずれも枝番を含む))と弁論の全趣旨によると、被告は、本件発明を従来技術として、二件の特許の出願をしたこと、その出願の過程において、被告は、本件発明と右出願に係る発明は、絶縁基台に接点ばね片を埋設する方向が異なる旨の主張をしなかったこと、以上の事実が認められるが、右事実は、本件特許とは別個の被告が出願した特許に関する事実であって、何ら右1の認定を左右するものではない。
二 争点2について
1 原告は、本件特許請求の範囲第1項の「連結手段」を「連係手段」と読み替えるべきであると主張するので、この点を判断する。
(一) 証拠(甲一八、一九)によると、「連係」は、「たがいにつながりを持つこと」を意味するのに対し、「連結」は、「つないでひと続きにすること」を意味し、その国語的な意味は、明らかに異なることが認められる。
(二) 本件特許請求の範囲第2項には「連係手段」という記載が存するところ、同第1項には「連係手段」という記載は存しない。しかし、同第1項には、「連結手段を介して連係設置し」という記載が存すること、同第2項(イ)ないし(ハ)は、ガイド部材と下の接点ばね片を直接又は連結子を介して連結した構成であることからすると、本件特許請求の範囲第2項は、同第1項の「連結手段を介して連係設置し」という記載を受けて、ガイド部材と下の接点ばね片を連結して、ガイド部材と接点ばね片を連係せしめる手段を記載したものと認められる。そうすると、本件特許請求の範囲第2項には「連結手段」が記載されているということができるから、同第1項の「連結手段」を「連係手段」と読み替えなくても、同第2項の記載と矛盾することはない。
(三) 証拠(甲二、一七)によると、本件明細書の「発明の詳細な説明」には、「連結手段」という語句が一度も用いられていないが、本件明細書の実施例及び図面には、下の接点ばね片をガイド部材に直接又は連結子を介して連結したもののみが記載され、連結以外の連係方法についての記載はないことが認められる。
(四) 構成要件(二)を「連係手段を介して連係設置し」と読み替えると、「連係」が重複し、「連係手段を介して」の部分が無意味になる。
(五) したがって、本件特許請求の範囲第1項の「連結手段」は文字通り「連結手段」と解すべきであり、「連結手段」を「連係手段」と読み替えるべきであるという原告の主張は採用することができない。
2 被告物件の接点ばね片一〇〇Aは、別紙物件目録各記載のとおり、その先端部が、イ号物件、ロ号物件については、ガイド部材(ガイド兼カバー)一〇〇Dの圧接突部一〇六、肉厚側板面106’に、ハ号物件については、圧接突部一〇六に、それぞれ当接しているが、このような構成は、右1(一)認定の「連結」の意味に照らすと、「連結」ということができないばかりか、右1(三)認定の本件明細書の「発明の詳細な説明」に記載されている連係方法とも明らかに異なっているから、右の構成が構成要件(二)の「連結手段」に当たるとは認められない。
原告は、被告物件の左の接点ばね片一〇〇Aは、ガイド部材(ガイド兼カバー)一〇〇Dと、常時接触(圧着)しているもので、一瞬たりとも離隔することはないから、両者を固着した場合と構成及び作用効果において全く変わることがないと主張するが、検出突部が対象体に押されて接点が閉となるときには、被告物件の接点ばね片一〇〇Aとガイド部材(ガイド兼カバー)一〇〇Dは離隔すると認められるから、これを、両者が固着した場合と同視することはできない。その他、原告の「連結手段」に関する主張(前記第三の二2(原告の主張)(二)の主張)は、既に述べたところに照らすと、いずれも採用することができない。
三 よって、原告の本訴請求は、いずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森義之 裁判官 岡口基一)
裁判官 榎戸道也は、転補のため署名押印することができない。
<以下省略>